映像新聞社の発行する映像業界紙映像新聞の第2262号で弊社の運用するOn Site Multicam Ingest System(事例紹介当サイトブログ記事)について紹介されました。
同様のインジェストシステムはオーダーに応じて柔軟な体制で構築/運用可能です。
ぜひお問い合わせください。
===以下引用===
フジテレビ「モシモノふたり」番組制作現場より
長時間マルチカメラ収録を可能に
「MAI」インジェストシステムを運用テレビ番組制作の現場で、マルチカメラの信号をデジタイズ収録する方法にはさまざまな選択肢がある。ディスクレコーダー1つをとっても、内部処理コーデックや処理速度、記録時間、ポストプロダクションへつなげるためのフローの親和性など、プロジェクトに合わせたチェックポイントは多岐にわたる。今回、ロケ現場でのマルチカメラ収録から高効率でスムーズにポストプロ側に手渡すワークフローを構築し、テレビ番組制作現場で運用をしているAT Linkage(エーティーリンケージ)社から、インジェスト・収録システムについて話を聞いた。
AT Linkageを主宰する福谷亮氏は、放送業界での知見を活かして10年以上前からインターネット放送制作にも携わっており、現在の放送と通信が融合していく過程を現場で体験してきた。同社は、福谷氏を中心に、現場で培ってきたノウハウから、インターネット動画配信やIP映像伝送、制作プロジェクトに合ったシステム構築の担い手である。さらに、コンテンツ企画演出や運用まで請けられるエキスパート軍団だ。
同社が運用するマルチカメラ対応インジェスト・収録システムは、同社がシステムを担当した今年の伊勢志摩サミットの国際メディアセンターや、日本テレビ系列で放送された「全国高等学校クイズ選手権」の現場でも使われた。
現在、フジテレビ系列で放送中のバラエティ番組『モシモノふたり〜タレントが“おためし同居生活”してみました〜』を担当している。
番組はタイトルどおり、芸能人の未婚男女1組が2泊3日の疑似同居生活をするというもの。同居する屋内には、各部屋のポイント箇所にカメラを設置。収録は長いケースで、1日20時間以上もカメラを回すこともあり、3日間のロケ現場で合計40〜50時間になるという。屋内に設置した12台~15台のカメラを切り替えながら、8台分のソースを同時収録していく。リアリティ番組であるため、リテイクは不可能。よって収録中にインジェストシステムにトラブルがあっては許されない。AT Linkageは、限られた運用スペースにおいて単一障害点を極力排除した、冗長構成のシステム構築を図った。マルチカメラの長時間同時収録システムには、Quadrus Technology(クワドラス社)のマルチチャンネル/マルチフォーマット・レコーディングソフトウエア「Ingest Machine」が組み込まれた、阿吽(あうん)技研製のインジェストシステム 「MAI(マルチチャンネル・オートマチックインジェスター)」を採用。同システムでインジェストとエンコーディング、取り込み先のストレージへの転送をする。カメラとのダイレクトなインタフェースにはマルチチャンネル・ルーティング対応のフレームシンクロナイザーを置き、さらに安全性を高めるため、ストレージシステムも含めた全体の冗長システムとしてNewTek製ライブプロダクションシステム「TriCaster」(8ch仕様)を単体動作の予備機として運用した。
本システムのフローは、まずフレームシンクロナイザーでHDカメラ信号を受け、アナログオーディオをエンベデッド化し、TC(タイムコード)と合わせてSDIに変換。この信号をインジェスターのMAIが受け、ProRes LTとDVの2コーデックを同時に生成する。
MAIはチャンネルごとに同時に2つのコーデック生成が特徴で、リアルタイムでのSDダウンスケーリングやTCバーンインも可能だ。このため、DVコーデックによるプロキシファイルが収録時に生成でき、収録後のトランスコード作業が省ける。この点が今回の収録でMAIを採用した最大の理由であり、このような長時間収録には相当な時間短縮となる。
フォーマットの選択理由は、LTはクォリティとファイルサイズのバランスが良く、ポストプロ編集でそのまま扱えるフォーマットであるため、そしてDVは、プロキシ用としてどの環境でも再生できるという利点から番組制作時に要求されることが多いからだという。共有ストレージに「SPACE SSD」
インジェスターから転送されるデータを確保するストレージは、大量の同時編集アクセスを受け入れられる帯域幅と転送速度を持つ、GB Labs社製の共有ストレージ「SPACE SSD」を選択。SPACE SSDは、ProRes 422 LT30(102メガビット)で280ストリームを扱え、超高速転送と高いパフォーマンス維持し続ける映像制作向けに設計されたNASストレージである。放送運用でのミッションクリティカルな環境において信頼性が高いことも採用した理由の1つという。今回のストレージ部位は、SPACE SSD(以下SSD)をメイン(SSD 11.5テラバイト仕様)とバックアップ用途にSPACE ECHO(HDD 30テラバイト仕様)の冗長を組んでおり、バックアップのECHOは基本的に、収録中は外部からアクセスせずに進めている。1時間あたり、LTで50ギガバイト、DVで12ギガバイト、それぞれ8チャンネル分が3日間、そのままストレージに保存されていく。
今回利用しているSSDモデルでは収録データがストレージ容量を超えるため、SSDと同じセグメントにいるMac Proで納品用のHDDにコピーしていく作業を入れ、ストレージ運用を調整した。各Mac ProからSSDにアクセスし、素材データの整理をしながら最終的にファイルコピーソフトウェアを使って、8台分のHDDにベリファイ&差分コピーをしている。また、バックアップ用SPACE(HDD)側では収録データをオンエアまで保存している。
このようにベースバンドでのインジェストからポストプロへ納品するまで、テープメディアを一切使わない作業フローは、国内のテレビ番組制作ではまだ少数だ。AT Linkageは、本システムの現場への搬入から稼働まで2時間以内で完了させるという。また、プロキシも含めた全収録データは納品用HDDに保存され、ロケ現場の撤収タイミングで納品しているという。このような柔軟性と敏しょう性を両立できたシステム構築は、制作現場において高い満足度を提供している。